遺言を専門家に頼むことの意味
「遺言は、法律に定める方式に従わなければ、することができない。」民法960条に書かれています。でもこれ、本当でしょうか?
例えば、普段から「この家屋敷は、兄弟のうち長男に相続させる。」と言っていたような場合、遺言にならないのでしょうか?こういったお話はよくお聞きします。そしてそのお話は、相続で揉めている場合がほとんど。ですがもし、相続人全員で認めるならそれはそれで、いいのでは?つまり、法律に定める方式でなくても遺言ができてしまうのではないか。とするとなぜ、960条があるのでしょう。
この例の場合、遺産分割協議をし、その協議書を提出しないと、国の機関である登記所は受けてくれません。それは、国、つまり国家権力が「遺言として認めない」ということ。国としては方式に従っていないと遺言としては認めない。なので相続で揉めた時、国の機関である裁判所に「長男に相続させると言ってたんだから認めろ。」と言っても、『方式にかなっていないからダメです。』と言われてしまう。もちろん、裁判所の判断なので考慮要素として取り上げてくれるかもしれませんが、100%確実ではありません。そのため、法律に定める方式通りの遺言書を作成することが、争族を避けるためや最期の思いを遂げるためにもとても大切なことになります。
遺言書の方式は、3種類あります。最も簡単な自筆証書遺言(民法968条)は、とても簡単。名前、本文、押印すればできます。簡単です。法務省のホームページにはとても懇切丁寧な記載があります。ぜひ見てみてください。なので、いたって簡単に作れます。ではどうして、専門家に頼む必要があるのでしょうか。
一つには、法務省の記載を見ても、例えばページが複数にわたる場合の記載の仕方や不動産の表記など、間違えずに記載しないといけないため、実際に自分で作成するのはなかなか難しいこと。次に遺言書の保管です。遺言書は、家庭裁判所による検認を受けないと、登記所は受けてくれないので、遺言書がきちんと遺言書として機能するかどうかは、見つけた人にかかっています。つまり、遺言書を発見した人が、もし廃棄などすれば私用文書毀棄罪に問われる可能性がある(刑法259条)とはいえ、廃棄した証拠、見つけられるでしょうか?内容は確認できるでしょうか?これは難しい。廃棄された遺言書を見付け出し、その内容を確認するのは非常に困難ですね。
そんな場合に備えて、法務省は遺言書保管制度を設けています。しかし、この制度をお知らせしても、当職に預かりを依頼される方がほとんどです。役所は敷居が高いと仰る方が多いです。
まとめ
遺言書は、国を使って遺言通りの相続とするため、国が動きやすいように方式に従った遺言書を作ることが大切です。そして作成後は、保管にも気をつける。相続が開始した場合には、遺言書通りの相続が遂げられるように手配りしておく。その結果、その後の揉め事もなくすことができます。